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Author:jardio
主に霖之助、東方香霖堂関係のSSを書いているサイトです。

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まちぼうけラプソディ

続き物になります。

短めですが、どうぞ。

因みにpixivにも投稿しております。
静謐、という言葉が似合う空間は、この幻想郷では意外な程に少ない。
自然が産み出した景観や空気は表面的には静けさを纏っているように見えるが、それ自体は無数の音の氾濫によって生み出されている。
木々が奏でる梢や葉の流音、森に生きる動物たちの日常、空間と環境が紡ぐ動圧。
多種多様な世界の声が幾重にも重なり、氾濫し、交じり合う事で無の音を産む。
そしてここ香霖堂に満ちる静けさは、そういった「動の静」とでも言うべき静けさとは別種のものである。
この空間に在るのは、無数の道具達だけ。
店の外壁という物理的な物と同時に、店という概念によって外の世界から隔離されたこの空間は、外のそれとはまた違った安らぎを生み出すのである。
その中で僕は今、いつもの様に店内の椅子に腰掛け、瞼を閉じている。
ゆったりと心を落ち着け、無音の中にに思考を溶かすことで、日々の疲れを癒し仕事に勤しむ日常からの脱却を目指…

ガチャッ カランカラン

…どうやら今日も、僕が安息の日々を迎えることは出来ないらしい。全く、誰が来たものやら…



扉を開けて店内に入ってきたのは、緑髪を纏う美しき花の妖怪、風見幽香。
「あら、これはこれは店主さん。開店直後から居眠り?だらしないわねぇ」
開口一番そんな事を口にしながら、彼女はカウンターに迫ってくる。
「まだ開店前だよウチは。流石にこんな早朝から店を開ける気にはならないね」
「あら、時間外でも対応するのがここの強みじゃないの?前にあそこのメイドが言ってたけど」
彼女は近くの椅子を引き寄せると、僕の対面に腰掛ける。
「それは僕の気分次第だ。で、それに見合うだけの用事でも有ったのかい?君は」
「んにゃ全然。単なる暇つぶし?」
「…暇つぶしで僕の安息を奪わないで貰いたいもんだね」
「なーによそんなジト目でこっち見て。シワ増えるわよ」
「…まぁ、で、結局何がしたいんだ。その大きな袋に何か関係が?」
「まぁあるといえば有るわね。別件付きだけど」
「別件?」
「そ。まぁまずは本題からいきましょうか」
そう言って彼女が袋から取り出したのは、二本のガラス瓶。
「だいぶ前に頼まれてた奴、出来たのよ。アンタは忘れてたかもしれないけど」
そういって彼女が見せつける瓶を眺めて、僕はふと思い出した。
「…ああ、そういえば頼んでいたっけな。ワイン」
「やっぱり忘れてたわね、この馬鹿。前に遇ったとき、後で取りに行くなんて言ってちっとも来やしないんだもの。態々私が届けてあげた訳」
だいぶ前の事だったが、彼女と屋台で飲んだ折にそんな事を言っていた…様な。
「そうだったか、済まないね。何か礼でも…」
「別にいいわよ。酒の席での口約束だったんだし、気を使わなくても」
「いや、それでは僕の気が済まないよ。何か出来ることは有るかい」
「フフン、なら丁度いいのがここにあるわね」
僕の返事を聞いて、彼女はしめたとばかりに袋に手を入れると、もう一つ小さな袋を取り出した。
「これは…」
「サボテンよサボテン。ちょっとこの子を預かって欲しいのよ」
「それは良いんだが…何故僕に?」
「ちょっとした実験。この子があなたの下で育ったとき、私の育てるサボテンとどのような差異が生まれるのか、っていう奴よ…まぁ興味本位でなのだけどもね」
「実験…」
「ああ、この子達自身には了解してもらっているし、この土地の他の奴らにも同じこと頼んでたの。で、アンタにもって訳よ」
「ふむ…分かった、それでいいなら引き受けよう」
「フフ、じゃあお願いね。それじゃアタシは他のとこ廻ってくるわ」
「ああ。ワイン、ありがとうな…今度一緒に飲むかい?」
「あら嬉しい。日が決まったら連絡頂戴ね」
「分かった、それじゃあ」
「ええ、また」

そう言って彼女は空へ飛び立っていった。あの様子だと、結構な数の人妖に依頼していたのかもしれない。
と、ここで僕ははたと気づいた。
サボテンの育て方を、僕は知らない。
「…ふむ、まあ良いか。自力で調べよう」
確か以前収集した本の中に、外の世界の植物に関する辞典が有ったはずだ。それを探そう。
そう思い立って、僕は店の奥にある書架へ向かうことにした。




「ただいまー」
そう言って私は家のドアを開けると、静かな部屋のテーブルに袋を置いた。
近くに備え付けたティーポットと茶葉を引き寄せて、ゆっくりと紅茶を蒸らす。
「ふぅ…」
あの店を出てから幾つかの場所を廻ってサボテンを置いてきたが、それ自体は私にとってはどうでもいい事だった。
態々こんな大掛かりなことをした本当の意図は、あのサボテンを香霖堂に置かせてもらう、その事だけだったのだから.
私の能力は、花…すなわち植物を操る力。
それはただ植物達を動かすだけではなく、私を知る皆が思っている以上に様々なことが出来るのだ。
そう、例えば…意識の転移、とか。
私の意識だけを植物に伸ばし、草木が感じているモノを私が視る。
つまるところ今回私が企んだのは、要するに覗きである。
だからと言って、別に私にその手の趣味があるわけじゃない。
しかしある彼の噂を耳にした私は、好奇心から行動を起こさずには居られなかった。
以前人里に訪れた際、彼の師匠という道具屋から聞いた話だが、あの店主は外の世界の道具の中でも、自分のお気に入りを店に並べずしまい込む癖があるのだとか。
その中には、以前彼が話していた植物の為の薬というものが有るらしい。
日々植物達を愛で、花と共に生きる私としては、彼らが健やかに育つために必要な
それを聞いて彼に一度、その薬とやらを譲って欲しいと伝えたのだが、曖昧なまま断られてしまったのだ。
店に遊びに行った際に彼の自慢の倉庫を覗いては見たが、どこかに隠し扉でも有るのか、それらしい物は見当たらなかった。
そこで少々強引な手段だが、こうやって彼の行動をこっそり覗かせて貰うことにしたのだ。
「さて、それでは早速…」
私はテーブルの上に飾っていたサボテンを手元に置くと、意識を集中させてゆっくりと息を吐く。
そのままするすると目の前の視界が植物の内部に溶けこみ、身体と心が切り離されたかの様に肉体の感覚が消失する。
浮遊したような私の意識だけが高速で草木の根や大地を伝い、駆け抜けていくと、よく見慣れたあの店主の店が見える。
その一瞬の後、まるで何かに押し込まれたような勢いで急に視界の動きが止まった。
どうやら目的の場所にたどり着いたようだ。

ここは…あの時私がサボテンを置いたカウンターか。
どうやら位置は変っていないらしい。
周りを見渡すが…どうやら店主は近くには居ないようだ。
一緒に渡したワインの瓶が見当たらないが、どこかに仕舞いにでも行ったのだろうか。
「ったく何処に行ったのかしらね…」
「む、誰か居るのか?」
おっと、彼が戻ってきたようだ。
この状態でも声は出てしまうから、一応気を付けないと…
「…?誰も居ない、か」
店の奥から出てきた彼は、抱えていた何冊かの分厚い本をカウンターに置くと、「植物辞典」と金文字で背表紙に書かれた本を捲り始めた。
「ふぅ、思ったより手間取ってしまった…書庫の整理もそろそろ考えるか」
彼はブツブツと呟きながらページを捲り続けると、目当ての場所を見つけたのか、じっくりと読み込んでいる。
私はそのうち読み終えてこの子の世話に手を付けるだろうとアタリをつけて、彼の姿を観ていることにした。
そうすれば凝り性の彼の事だ、植物の世話に使う薬とやらも自ら進んで出してくるに違いない。
それを仕舞っている場所さえわかれば、それをネタに彼に話を付けられるだろう。
私はどこかの白黒とは違うのだから、強奪なんて品のない手段は御免なのだ。

ワインとサボテン

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=20233472


…そんな事を考えながら、既に5時間ほど経過した。
…窓からちらりと見える景色は、既に茜色だ。
…で、まだなの?

目の前の店主、いや阿呆は相変わらずだ。最初に持ってきた本を全て読み終えて立ち上がったときに抱いた淡い期待を、この男は物の見事に打ち砕いてしまった。
目の前に居る私…が宿ったサボテンの事など意識の外に完全に放り投げているかの如く、次々に本を引っ張り出しては積み上げてまた読み始める。
彼自身は知識欲が満たされて心底嬉しそうに笑っているのだが、正直このまま怒鳴りたいぐらいである。
昼間の私との約束はなんだったのか…
「…ふむ、なかなか面白い記述だったな。さて次は…花言葉、か」
…花言葉、ねぇ。
流石にそろそろ切り上げて欲しい。でなければ、ここまで辛抱強く付き合い続けた私が阿呆らしくなって来る…
「サボテンの花言葉…燃える心、内気な乙女、秘めた熱意、か」
その通り。外の世界で分布している地域のイメージにはぴったりの言葉だ。
「情熱的、ね。…まるで幽香自身のイメージのようだ。」
情熱的ねぇ…そんなイメージを持たれていたのか私は。
今まで彼と会話する機会は主に酒の席が多かったが、私に対する人物評価はそのせいだろうか。
「普段の淑やかな彼女からは想像しにくいが…一緒に飲むときには結構地が出るのだろうか。僕はあちらの方が好ましいと思うが…君はどうだい?」
とここで、顔を上げた彼が私の方を見つめる。
私自身の評価を私に問われても、としか言いようがない。というか話せない。
「ふむ、君に聞いても仕方が無いか…まぁ彼女がサボテンを選んだ事にも、何かしらの理由が有ると取るべきだろう。今夜はその事について、じっくり思索に励むとするか」
そう言うと彼は椅子から立ち上がり、近くで灯していたランタンを持って本と共に奥へと消えた。
揺れるランタンの灯が暗闇のなかで、ゆらりゆらりと揺れながら小さくなっていくのが見える。
そして店内に残されたのは、暗闇の中ぽつんと佇む私のサボテン。

「…え?」

…世話は?





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  • Date : 2011-07-11 (Mon)
  • Category : SS
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