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Author:jardio
主に霖之助、東方香霖堂関係のSSを書いているサイトです。

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糸伝いのこころ #1






それはとてもか細い、小鳥か何かが囀るような、音だった。

ちりん

「…?」

ふと感じた音に、僕は顔を上げた。

香霖堂の玄関、扉の向こうからほんの僅かだが、音が聞こえる。

ちりんちりんっ

…まただ。

よく見ると、扉に吊るした来客を告げるベルが、僅かに揺れている。

普通は来客が有れば、もっと大きく音を奏でる筈だ。

しかし外を見ると、扉を揺さぶるほどの風は吹いては居ない。

考えを巡らす間にも、ベルは鳴り続ける。

「…はい?」

遂に気になって、僕は恐る恐る、ドアを開いた。

「君、は…」

目の前に浮かんでいたのは、一体の西洋人形。

何時もなら森の人形遣いが連れ歩いていた筈だが、見たところ一人だけの様である。

彼女は僕に向かって会釈すると、うっすらと光る糸を手渡してきた。

手に取って触れてみた瞬間

「こんにちは」

「!?」

頭に直接響くような、少女の声が聞こえた。

「…驚かせてすみません。こちらが香霖堂で宜しいでしょうか?」

平静を保って、返事をする。

「ああ、そうだが、君は…アリスの?」

「上海人形、と呼称されています。以後お見知りおきを」

「あ、ああ。それで今日は一体、どの様な御用向だい?」

「はい、アリスの要望で、外の洋服を何点か見繕って欲しい、とお願いに来た次第です」

アリスが遣わせたのか。…ならば心配ないか。

たまに外界の衣服を求めて訪れる彼女だが、それ程忙しいのか。

「アリスが…そうか。解ったよ、中で待っていてくれるかい」

「では、遠慮無く…お邪魔させて頂きます」

扉を開いて、彼女を招き入れる。





僕が奥に服を取りに行って戻るまで五分少々といった所だったが、戻ってきても彼女は元の場所に居た。

カウンターで解れや虫食いのチェックをしている間も、僕の手元をじっと見るばかり。

視線が気になったので、少し話を振ってみることにした。

「…いつもはアリスが来ているが、今日はどうしたんだい?」

「インスピレーションが舞い降りた、と申しておりました。ここ3日程篭って作業しておりました故、何卒ご容赦を」

「ああ、それは構わないんだが…君、話せたんだね」

「…ええ、発声する術式が有りませんので、声には出せませんが」

「アリスとも、こうやって?」

「はい。…最も、アリスからの魔力供給が無ければ、簡単に切れてしまうのですが」

「そうなのかい?」

「ええ、自分の主人以外と繋ぐには、制限が掛かりますから…」

「そうか…と、良し、問題は無さそうだ。これをアリスに届けてくれるかい」

「分かりました。それでは…」

「お、っと。少し待ってくれないかい?」

出口に向かおうとするのを咄嗟に引き止めた。

「…はい、なんでしょう」

彼女は無機質な眼差しをこちらに向ける。

「いやなに、聞いてみたい事が有ったんでね。お茶…は飲めないか」

「…お誘いですか?」

「ん、まぁそうだね。時間が有ったらで構わないが…」

「…構いませんよ。まだ夕食の準備まで時間が有りますし」

そう言って彼女は、カウンターの上に座り込んだ。

「それで、どういった質問でしょう?」

「人づてにだが、アリスが自立人形を開発していた事は聞いていてね。君がそうなのかい?」

「いいえ、今の私は予め設定された術式で稼働しているだけです。自立、という訳では有りません」

「自由意志は無いのかい?」

「特に制限は有りませんが、今まで行った事は有りません」

「なら、アリスは一体何の為に君を行動させているのかな」

「自立の発現の為です。」

「ほう」

「アリスは様々な術式を試しましたが、どれも成功には至りませんでした。」

「ふむ」

「そこで人間の赤子を模して、必要最低限の本能に当たる行動規範を組み込んだ私を生み出しました」

「人間の成長を真似るというのか」

「ええ、本能のみの状態から環境に触れる事で自我の発芽を狙った物と思われます」

…なるほど、興味深いな…。

「…それで結局、君に自我は存在するのかな?」

問い掛けを聞いた彼女は少し間を置いて、続けた。

「…分かりません。言葉遣いや行動は規範のそれですが、こうして会話している間にも自動学習が進んでいます。いつの間にか、使える言葉が増えていたり」

「君はそれをどう思うのかな?」

「…分かりません。この想いが、感情と呼ぶ物なのか、どうか」

「そうか…なら、君にコレを渡そう」

そう言って僕は近くの棚から、小さな小箱を持ち出した。

「…?」

「開けてご覧」

店内に流れだす、ゆったりと、しかし躍るようなメロディ。

「これは、オルゴール、ですか?」

「ああ、持って行くと良いよ。ここでは使わないものだしね」

「…何故ですか?」

「見てみたいのさ。君が創りだす自我を」

「?」

「本能だけに従って行動すれば、そこに心は生まれない。只の機械と同じだ。だから試してみたいのさ」

「試す、ですか」

「君は空いた時間にでも、このオルゴールを流して、ゆっくり聞いてみると良い。次にこの店に来たときに、僕に感想を述べてみて欲しいんだ」

「感想…」

「この曲の何か一つでも良い。感じた事を言葉にするんだ。きっとそれが、キッカケになるよ」

「…分かりました。試行してみます」

「ああ、楽しみにしているよ…長々と引き止めて済まないね」

「いえ…それでは、また」

「またのご贔屓を」

ベルを鳴らして、扉は静かに閉ざされた。

椅子に深く腰掛けると、手近に有った煙管を引き寄せ、火を付ける。

彼女が何を思うのか、どの様な心を生み出すのか。

昔馴染みの少女の、育ちゆく様を思い出しながら、僕は静かに紫煙を吐き出した。




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  • Date : 2010-11-28 (Sun)
  • Category : SS
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