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曇天の澄月







11月22日。

いい夫婦の日、等と人間達に称されるこの日は、世間の夫婦が仲睦まじく過ごす日、という話を山の上の現人神から聞いていた。

実際は、語呂合わせから来た外の世界のこじ付けらしいが、ここ幻想郷には割とすんなり受け入れられたようだ。

子を持った家庭の夫婦は、家事に仕事に子育てに追われ、慌ただしい日々を過ごしている。

盆や正月、祭りでもなければ、普段腰を据えて語らう時間の無い彼らに取っては、都合の良い機会なのだろう。

祖父母が健在なものは子を預け、夫婦水入らずの時を刻む。

預かる者が居ない家庭の場合は、慧音が示し合わせて開いた「寺子屋へのお泊り会」なる行事に参加させ、時間を作るのだとか。

おそらく今頃は、我が恩師夫婦も二人で語らっているのだろう。

照れ性な師匠を、奥方がからかい過ぎなければ良いのだが。

そんな事を考えながら、僕は店内ではしゃぎ回るお空の様子を眺めていた。

と言っても、別に僕とお空が夫婦、という訳では無い。

何でも今日地霊殿では、夫婦ならぬ飼い主水入らずの、保護者会議を行うそうだ。

もちろん、その間お空を別の場所に移す必要がある訳だが、流石に太陽の化身を寺子屋に連れて行くわけにはいかない。

そこで、彼女らとある程度面識が有り、一晩預かっても問題の無い場所としてここ、香霖堂が選ばれた訳だ。

引き受けた当初は鳥頭、という話を気にしていたが、なかなかどうしていい娘である。

無知故の純粋さだろうか、解らないもの、興味が有る物に対しては素直に尋ねて来るし、僕が触らぬよう注意した物には近寄りもしない。

あのさとりの教育が行き届いているようで、預かる側としては安心である。

食事や風呂も済ませ、このまま明日の朝まで何事も無ければ、と思ってはいた。

…居たのだが…。




最初に気づいたのは、お空だった。

「にゅ!?…?」

「?…どうしたんだい?」

「あのね、今ね、うつほの肩を、ぶわぁー、って!!」

必死に身振り手振りをするお空。

「?」

「ぶわぁーって、さわって、なで…うにゅにゅ!!」

「…またか?…っ!?」

今度は僕もだ。姿は見えないが確実に、撫でられた。

「うにゅ…なんだかおさけくさい…」

確かに辺りには、濃い酒の匂いが漂っていた。

酒気に当てられたか、目の前でお空は目をこすり続けている。

酒の匂いと、掴めぬ姿形。

「…未だ居るんだろう?萃香。出て来てくれないか」

そう天井に向けて語りかけると

「にゅっふっふ…ご明察。まぁ霖之助にはバレるかね」

「まったく…少女に余り意地悪が過ぎるんじゃないか?」

「そう言いなさんな…ほれっ」

掛け声と同時に、部屋に漂っていた霞のような粒が目の前に集まって行く。

やがて小さな鬼の姿を取ると、手に持った瓢箪を差し出して告げた。

「どうやら世の男女は、夫婦でしっぽり語らう夜らしい。という訳で相手の居ないアタシが、同じく相手の居ないアンタを慰めに来てやった訳だ。感謝しなさい」

そう言ってにっかり笑う萃香。

「残念だが、今夜の僕は子持ちでね。丁度そこの童を寝かしつける所だ」

「こんな美人を童、ねぇ。一体どんな趣味なのやら。…はっ、まさか幼女趣味」

「違う。断じてそれは無い。…保護者会議だ、とかで一晩預かっただけさ。他意は無いよ」

「ふーん…ねぇ、アンタ名前は?」

「んと、れいうじうつほ!!みんなおくうって呼んでる!!」

「おくうか…アンタ酒飲める?」

「お酒?…のめるのめる!!」

「おお、良い返事だ!!よし、飲むぞー!!」

「のむぞー!!」

「おいおい、ちょっと待…」

「縁側いくぞー!!」

「おー!!」

…全て言い切る前に、ドタドタと音を立てて走り去った。

「…まったく、これから寝る所だったのに…」

仕方無しに人数分の半纏を持つと、読みかけの本を持って僕も縁側へ向かった。





「ん…にゅっ…ぷはー!!」

「おうおう、良い呑みっぷりだねぇ…そら、もう一杯」

「えへへ…ありがとー。んく、んく…」

「余り飲ませすぎるなよ…?寝る前なんだから」

「解ってる解ってる…飲めない奴に無理強いはしないよ、あたしは」

「うきゅ、んくっ、…ふう…んん?」

「どうした?」

「今日はお空みえないね…ざんねん。」

見上げると、空は薄暗い雲の海。

「楽しみにしてたのかい、アンタ」

「うん。お月様は、地上にこないと見れないから…今夜はまんげつ、ってりんのすけがいってたよ?」

「ああ、晴れていれば綺麗な月を拝めたんだが…」

「ほうほう、それじゃあこのアタシが、この空での月の楽しみ方って奴を教えてしんぜよう」

「ほんと!?」

「ああ、酒の席で聞いたんだけどね。こうやって丸い物…例えば饅頭だ」

彼女が差し出した手を見ると、居間の棚に仕舞って置いた饅頭が何時の間にやら握られていた。

「ほむほむ」

気づけば、お空の手にも同じ饅頭が一つ。

「月を頭に思い浮かべながら…ぱくり、と」

「あー、んむ、むむ、んにゅっ」

「どうだ、見えたかい?」

「見えた!!」

「どんな風だった?」

「でっかいおまんじゅうだった!!」

聞いていて、思わず肩を落とす僕。

「アッハッハ!!そりゃぁ良い!!良い例えだよ、アンタ」

「えへへ…」

「こうやって見る月は、見た奴にとって一番美しい姿を象る。アンタにとっての月は、食べたいぐらいに綺麗な、大きな饅頭だったってことさ」

「でも、うつほ、本物のまんげつ、見たことないよ?」

「おお、そうかいそうかい。だったら特別サービスだ。ほれっ」

そう言って指先を一振り。

それと同時に吹き荒ぶ、猛烈な風。

「う、うにゅー!!」

「おい萃香、やり過ぎだ」

「ナハハハ、まぁ見なさいよ、ほら」

指差された先に浮かんで居たのは、穏やかな光を湛えた真円の月。

やがて風に吹かれたのか、はらり、はらりと雪が降り注ぐ。

「うわー…」

「月見酒に雪見酒。地上の夫婦達も楽しんでるかねぇ」

「これは…美しいな」

「だろう?という訳で見物料だ。摘みでも貰おうかね」

「ふむ…まぁ良いか。今出すよ」

「頼んだよ~。折角だ、夫婦酒と洒落込もうじゃないの。子供も居るし」

「うにゅ?」

「今晩はここの預かりなんだろう?親子水入らずってことで一つ」

「じゃあじゃあ、うつほが注ぐ!!おかあさんに!!」

「…おかあさん、ねぇ。…何か照れくさいなぁ」

「何が照れるって?」

「…何でもないよ、あんた」

「…?」

「何でもない!さっ、呑むよ!!」

「はーい!!」

「それじゃあ…乾杯」

「乾杯っ!!」

「かんぱーい!!」



カランッ、と涼やかな音色が夜空に響く。

月明かりと雪灯り、ほのかに染まる紅い顔。

一夜限り、三人の不思議な親子の笑い声は、明るく、高らかに。

傍らの夫婦杯には、澄んだ月と雪の花弁が、静かに浮かんでいた。









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  • Date : 2010-11-23 (Tue)
  • Category : SS
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