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【一時間SS】 しみる、あじ






カタ、カタカタカタカタ

ピイイイイイイイイ

「っと、しまった…ええと布巾は…と。熱っ」

古ぼけた店内に甲高い音を撒き散らす薬缶を掴み、この店の主が慌てて台所へ駆ける。

窓ガラスがしっとりと曇る程に熱を生み出す外の世界の暖房器具は、天板で煮炊きも出来る為、中々重宝している。

だが温かさに気を取られていると、鍋や薬缶が空になるまで水気を飛ばしてしまい、その度にこうして水場へ走る事になる。

まぁ、火加減の仕方が解らない以上、常に注意している他無いのだが。

考えを後回しにしてから、流しに据え付けてある桶に水を張り、急いで放り込むと、大きな蒸発音と共にもうもうと、白い湯気が台所中に溢れかえった。

流石に何回もこんな事を繰り返すと、負担を強いる道具たちにも、申し訳なく思ってしまう。

取り敢えず薬缶に新しい水を注いで、ストーブの上に載せてやると、まるで扱いに憤慨するかの様に音を立てて、静かに湯気を吐き出し始めた。

落ち着いた様子に安堵して、席に戻ろうとすると



カランカラン

「おーい、香霖堂。いるかー?」

「ああ、居るよ。どうぞ」

「っ、ぷぅ…お邪魔するよっ、と。店の雪かきぐらいしろよなー」

雪を払いながら入ってきたのは、暖かな栗色のコートを着込んだ、深紅の女性。

本来ならもう一人居るはずだが、その姿は見えない。

「君が来るたび溶かして行くから良いだろう、妹紅」

「店主が客に頼ってどーすんだっ、と…ほら、今回の分」

「何時も済まないね。今日は君ひとりかい」

「ミスティアは屋台だとさ。ま、掻き入れどきだしな」

「季節が季節だからねぇ。商売繁盛、結構な事じゃないか」

「それじゃあ聞くけど、ここは一体いつが掻き入れ時なんだい?店主さん」

ニヤニヤと意地の悪い顔を見せる妹紅。

「決まってる。来るべき客が来た時さ」

「はいはいご苦労な事で。お腹空いたし、早く食べようや」

「ああ、そうしよう。鍋を持ってくるから、皿なんかを出してくれると助かる」

「はいはいっと」




「さて、煮えたな」

「ああ。もう食べても?」

「構わないよ」

「おし、いただきまーす」

「ああ、沢山食べてくれよ」

鍋の中身は牡丹鍋。

食欲を誘う香りが部屋一杯に漂ってくる。

器に取った具を夢中で頬張る妹紅は、とても幸せそうだ。

メインの猪肉は彼女の用意した具材なので、先に堪能して貰ってから、僕も頂く事にする。

「しっかし、悪いなぁ。肉以外全部用意して貰って」

「構わないよ。保存食をこれだけ作っても、一人で食べきるのは億劫だ。」

高野豆腐、凍み大根、雪室に閉まっておいた白菜、人参、牛蒡。

冬の前に用意した蓄えが、今日の夕餉を彩っている。

「毎度遊びに来る若いの二人が居るじゃないか」

「あの二人なら、事有るごとにコタツを占拠しているよ。蜜柑とお茶請けばかり減っていく」

「なんのかんの言っても、まだまだ子供舌ってか?」

「鍋の最中に豆しとぎ食べだすその口が言うかね」

「うるへー。豆しとぎはお菓子じゃねえ。主食だ」

「なら、この干し柿は貰って置こうか」

「ちょ、待てって、お前にもやるから!!」

「せめて鍋が終わるまで待て。白飯ならあるぞ」

「へーい…固いなぁ」

「死なないからって、不摂生して良い理由にはならんだろう」

「別に食い方なんて人それぞれだろー?」

「食い合わせが悪いと、見てる側が食欲無くなるんだ」

「わかったわかった。ほら、器貸しなよ。よそってやる」

「ああ、ありがとう………」

「…どうした?」

「…嫌、何でもない。少し思い出しただけだ」

「なんだ~?昔の女か~?」

「阿呆な事を抜かすな。器、寄越してくれ」

「ああ、たっぷり食べるといい。暖まる」

「どうも。…頂きます」



口の中に広がる、濃厚な味噌と野菜、猪肉の味。

舌鼓を打ちながら、ふと一瞬、湯気の向こうに見えた姿を思い出して、暖まる。

感想を待ちわびる彼女に重なって見えた、自分の大好きだった親の顔を瞼の内に描きながら。









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  • Date : 2010-10-23 (Sat)
  • Category : SS
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